2008年4月13日日曜日

研究の方法論

研究の方法論:
「地域情報化プロジェクトにおける協働メカニズムの探究」より抜粋・引用

牧兼充
2008年2月4日

1. 仮説検証型と仮説構築型
研究には、仮説検証型、仮説構築型がある。仮説検証型の研究は、提示した仮説が正しいかどうかを検証することを主たる目的としている(Saunders et al, 2000)。一般的には、今までの理論研究から演繹的に仮説を導き、測定可能な操作仮説を構築して検証を行う。この場合、質的調査が実施されることが多い。一方新しい分野の研究、現状の理論ではうまく実態を説明できない場合には、仮説構築型の研究がおこなわれる。フィールドのデータから仮説を導出するので、帰納的な方法とされ、因果関係、メカニズムの理解、その理論家が目標とされる。


2. 質的調査と量的調査
研究には、質的調査と量的調査がある。それぞれの特徴を以下に示す。
比較のポイント
質的調査法
量的調査法
研究の視点
質 (特性、本質)
量 (どのくらいの量か数か)
哲学的ルーツ
現象学、シンボリック相互作用論、フィールドワーク、エスのグラフィック、至言主義的
実証主義、論理的経験主義、実験主義的、経験主義的、統計的
調査の目標
理解、記述、発見、意味付け、仮説構築
予測、統制、記述、確証、仮説検証
デザインの特性
柔軟的、発展的、創出的
事前に決定された、構造化された
サンプル
小集団、ノンランダム、目的的、理論的
大集団、ランダム、代表的
データ収集
調査の主たる道具としての調査者、インタビュー、観察、分権
無機的な道具(尺度、テスト、サーベイ、質問紙、コンピュータなど)
分析のモード
帰納的(調査者による)
演繹的(統計的手法による)
調査結果
理解的、全体論的、拡張的、厚い記述
正確、数字を用いる
Merriam, Sharan B. (1998) Qualitative Research and Case Study Applications in Education, San Francisco: Jossey-Bass (成島美弥、堀薫夫、久保真人訳『質的調査法入門―教育における調査法とケース・スタディ』 ミネルヴァ書房、2004)のp12の表1-1「質的調査法と量的調査法の特徴」を一部修正。


3. 科学的研究方法
今田(2000)は、以下の3つの方法を総動員して研究に取り組むことが理想と述べている。

(1) 数理演繹法: 普遍的に成り立つ理論法則によって現実を認識
(2) 統計帰納法: 実験や大量のデータから一般化された経験法則によって現実を捉える
(3) 意味解釈法: 個別で1回限りの事象から物事の本質を解明する


4. 研究のサイクル
質的・量的調査に関わらず、操作化可能な仮説を構築し、観察・測定し、目的に合致した方法で検証し、理論を構築していく研究サイクルの確立が重要。

[理論] -> 概念化-> [研究可能な理論的仮説]->操作化->[検証・反証可能な命題]->観察・測定->[記述・関係発見][構造導出・因果関係推定・検証][実験・シミュレーション]->検証(推定)->[データ分析の結果]->解釈->[分析結果の意味付け]->理論構築->[理論]

藤本隆宏、新宅純二郎、粕谷誠、高橋伸夫、阿部誠(2005) 『リサーチマインド経営学研究法』 有斐閣、p.10の図1-3の「研究のサイクル」


5. 総合政策学的アプローチ
総合政策学とは、(1)問題発見・解決指向型の研究、(2)従来の学問領域にとらわれない研究、(3)メディアないし情報通信技術の革新とその影響を強く意識した研究、(4)結論において何らかの政策的ないし戦略的含意(policy implication)を含む研究である(岡部、2003)。


6. 設計科学
吉田(1999)は、従来までの理論を中心とした科学はあるものの探究であり、それを「認識科学」(epistemological science、または、cognizing science)と呼び、21世紀に取り組むべき新しい学問は(あるものの探究?)であり、それを「設計科学」(designing science)と称し、21世紀には、これらを車の両輪とする新しい学術の体系を構築しなければならないと論じている。設計科学とは、「現象の創出や改善を目的とする理論的・経験的な知識活動」(吉田、2003,p.91)であり、医学や工学、農学などのいわゆる実学を科学として認識し、それに人文・社会科学などにも拡張すべきと吉田は主張している。


[論点]
ž 「設計科学」は、どのような研究の方法論をとるのか。
ž 「設計科学」の博士論文は、どのような章立てになるのだろうか。
ž 「設計科学」の研究の評価はどのように行えば良いのか。

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